2007.03.01 執筆コラム ターゲット開発に余念がない『新モデル・ファミリーレストラン』

公益社団法人 日本マーケティング協会発行 『MARKETING HORIZON』2007年3号掲載

最近のFR(ファミリーレストラン)は非常に意欲的・挑戦的だ。かつての標準世帯が標準ではなくなった今、誕生から30年以上たつFR業界が次々と新しい顧客開拓・オケージョン開発に取り組んでいる。

そんな中、FRの雄・すかいらーくグループが06年後半より相次いで新しいモデルの店舗を展開している。ここ数年FRから足が遠ざかっていた向きには、驚きが多いに違いない。

「おはしCafe GUSTO」は、カフェを意識したメニューとインテリアによる居心地の良さ、そして全メニューを「おはしでいただく」ことをコンセプトの柱に展開。選べるお惣菜メニューも充実し、女性グループやこれまでよりも年齢層の高い顧客のリピートを獲得している。FRという業態定義では語りきれない魅力を形にしている。

「Cafe レストラン ハンバーグガスト」は、比較的従来型FRに近いが、ハンバーグ専門店を意識したメニュー構成であり、品質も専門店と比較しても、まったく遜色がない。北欧をイメージした内装は、無難を旨とするこれまでのFRには見られないタイプであり、意気込みが感じられる。

いずれも「ガスト」を名乗っているように、価格帯は従来型「ガスト」に極めて近く設定しているものの、これまでの1000店以上存在する「ガスト」とは明らかに異なる、時代変化を意識した価値を形にしている点は足を運んで体験・観察することをお奨めしたい。

「The SKYLARK」は、もっとも挑戦的なモデルといえる。かつての「すかいらーく」をイメージしていくと、嬉しい裏切りを感じるだろう。ゆったりとした座席配置、視線が気にならないパーテション、インテリア・グッズやグリーンなどもいい意味でFRらしくない。店舗によっては赤いソファ席が中央にあり、シンボル的スペースとなっている。自ら「ファミリーディナーレストラン」と名乗っているように、メニューもこれまでより若干高めのプライスラインで質の高さを訴求している。何よりFRにつきものだったマニュアル的サービスではなく、ホスピタリティ・サービスへの試みが伺える点は、FRに親しんできた人ほど驚くかもしれない。

こうした店舗ゆえに、来店客も従来型FRとは異なる。大人女性グループやシニア世代の夫婦二人など、今後の世帯構造の主役たる「新・家族形態」を先取りしている。幼児の子供連れでは、確かに入りにくい雰囲気があるかもしれないが、先手型モデルとして注目したい。

FRだけでなく、FFも含め、人口動態変化・世帯構成変化に伴い、新しいモデルが次々と登場している。居心地と味わいを体験し、先入観を払拭し、ターゲット変化と日常的な食風景の変化を五感で感じ取るには絶好の場所である。