公益社団法人 日本マーケティング協会発行 『MARKETING HORIZON』2009年1号掲載
後生において08年が大きな歴史の転換点として認識されるだろう、と各方面で言われている通り、わたしたちの生活変化は著しい。雇用環境や家計状況など、日々の生活の中において肌で実感する変化も大きいが、「ターゲット」としての生活者をどのように視ていくか、その視点そのものも変えていく必要がある。
高齢化も少子化も、標準世帯の非標準化も、いずれも今に始まった話ではない。が、その割には従前通りの生活者像や家庭像が幅を利かせてないだろうか。マーケティング・プロセスのなかでせっかく把握した変化の兆しを十分に活かしきれないままに、見慣れた最大公約数的な像に終始してしまうことが多いのではないか。
定量調査も定性調査も、どちらも情報を得る手段として不可欠なものであるが、調査結果を活かす場面をより柔軟に、かつ充実させることにウエイトがおかれるだろう。
ターゲットをある塊でとらえていくことと、その生活のディテールを識ることは両輪の関係にある。塊としてとらえることは、ディテールの枝葉を切り落とすことではない。塊を象徴するディテールを見極め、それを意味化して塊に反映させていくフェーズをもって、はじめて生活者像を描くことができるのだ。
たとえば男女ともに多様な生き方・価値観のディテール情報が日々喧伝されているが、その意味で「ファミリー」を描く筆致はもっと多様化していくべきだ。世帯としては単身でも隣居や近居により大家族同様の行動をとるファミリー、血縁とは無縁のファミリー、ジェンダーロールにとらわれないファミリー…と社会の最小ユニットは動いている。その個々の動きを知っているひとは多いが新発想、新コンセプトへ結び付けるためには「ひと手間」が不可欠である。
ぜひ今年は、一度立ち止まって調査結果を意味化する時間を持って欲しい。調査結果から得た手応えは、要するに何を意味しているのか。それを明らかにすることで、調査結果や周辺情報が新たな繋がりを持ち始め、わたしたちのマーケティング活動の強力な味方となるだろう。
昨年後半から、暗いニュースとは裏腹にわくわくしているマーケティング関係者は非常に多いことと思う。何しろ新しいマーケティング・チャンスに満ちた時代が訪れたのだから。あちらこちらの市場や生活者に、新しい芽吹きを既に見つけていることだろう。その芽に意味を持たせ、より良い暮らしを描いていこう。マーケティングには、その力と責任がある。